【特集】『ぽぷかる』って何だ!? 長久手で動き出す聖地化の胎動 (3/3)
『聖地の聖地』というメタ構造
去る8月3日。栄で世界コスプレサミットが開催されているなか、筆者は名古屋市営地下鉄・東山線を突っ切り、Linimo藤が丘を経由して愛・地球博記念公園駅、つまり『ぽぷかる』の会場となる場所を訪れていた。やってきたのには特に理由は無く……というのはウソで、
- 万博を思いだして懐かしむ
- 個人的なロケハン
- 痛リニモを激写する (実はこれが主目的)
ぽぷかるキャラで簡易ラッピングされたLinimo車両がランダムでやってくるらしいという情報はTwitterのタイムラインにてキャッチしていて、アップされる写真を見るたび、ぜひこの目で見て、ついでにカメラに収められたら、なんか楽しいじゃないかと思ったのである。
結果としてぽぷかる&エネミィはおなかいっぱい見られたものの、リニモたんリニモはなぜか一度も出現せず、やや不完全燃焼な結果となったが、それもまたいい思い出である(余談だが、この日は快晴でたいへん気温が高く、体力が切れる前に早めの戦略的撤退であった)。
そして、お盆を挟んで8月21日水曜日。筆者はまたモリコロパークにいた。今度の目的は前回以上に熱が入っていて、
- モリコロパークまで、敢えて公共交通機関を使わない場合のリサーチ
(※単純に高速道路に乗りたかっただけという噂もある) - 限定リニモカードのゲット
⇒ 当日は混雑が予想されるし、実用性も抜群
(※ポストカードとリニモたんカードが欲しかっただけという噂もある) - キャラクターパネルを見てくる⇒ ぽぷかる終了後は撤去される公算が高く、見るなら今のうち!
(※あまりネットにあがってこなかったぽぷかるちゃん&エネミィ様パネルを激写したかっただけという噂もある)
さて、これら目的を達成するためには手段が必要だ。いわずもがな、今回はLinimoと乗り放題乗車券、ついでにETCや東名高速・瀬戸道路、資金もそれなりに要る。そう、それなのだ。それらなのである。
極端な話、Linimoがそれこそ劣悪な乗り物であったり*1、景観が工場だらけ、ずっと地下、あるいはモリコロパーク自体がもうすでに寂れに寂れて見ていて辛くなるような場所*2であるなら、筆者は21日にわざわざ緊急座談会の生放送をほったらかして、ひとり高速飛ばして長久手には来なかっただろう。
瀬戸で生放送の準備が進められていると思われる時刻、筆者は会場の下見に来ていました
お察しのとおり、筆者は『ぽぷかる』を通じて、長久手という場所が好きになってしまったのだった。個人的な『聖地』の誕生だ。東京や名古屋の臨海部・都心にはそれはそれの良さがあるし、新幹線にもそれはそれで良いものがある。が、長久手の周辺はとてものどかで、都会の喧噪とは縁がない。広々とした緑の広場で、少年たちがのびのびを草野球をしているのを見たときは、本当にここは名古屋市から東に数キロの場所なのか、と思わず心が洗われてしまった次第である。(やっとPart1.の伏線を回収しました。)
『聖地化』のジレンマをときあかす
話を戻そう。聖地化のモデルケースで分かりやすいのは『けいおん!』(豊郷小学校校舎)『ガールズ&パンツァー』(茨城県大洗町) 『Steins;Gate』(秋葉原ラジオ会館)『らき☆すた』(埼玉県春日井市) 『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(埼玉県秩父市) だろうか。おおよそどれも、作品の舞台や設定元となった場所が聖地巡礼の対象とされる。また、聖地とされた先も原作からコラボしたりされたり、便乗したりされたり、双方でノリノリであることも共通項だ。
緊急座談会のタイムシフトでも話題に出た通り、『ぽぷかる聖地化計画』はこの因果とは逆を辿る。聖地を"創作"して、そこへ呼び込むという形になってしまい、一般に呼ばれる<自然発生する天然の>聖地とは異なる、いわば<養殖の>聖地になりかねないというジレンマを抱えている。……のは確かなのだが、筆者の体験を踏まえると、この宿命のジレンマを抑制できるかもしれない、画期的で、ある意味ではひねくれた見方もできる。
【『ぽぷかる聖地化計画』が進行中の舞台を辿ってたら 『聖地』になった!】
これはよくある話で、Steins;Gateの影響でラジオ会館行ったら、そのまま秋葉原にハマってしまったとか、ガルパン関係のイベントで大洗町付近に行ったら行ったで町の雰囲気が大好きになってリピーターになっちゃった、ミリタリーに詳しくなっちゃった*3、などである。
この解釈であれば、因果は逆転しないので、自然な形で巡礼対象となり得るのだ。すなわち、聖地という名のきっかけが寄り集まって、決して押しつけがましくもなく、好きで好きでしょうがない人々によって、仮設の聖地は本物の聖地へと変わっていくというシナリオだ。
2006年8月13日の秋葉原・ラジオ会館前
『ぽぷかる聖地の聖地』というメタな入れ子構造にも変化できるぽぷかるは、Part1やPart2でも書いたとおり、魅力的なイメージキャラクターである、ぽぷかるちゃん・エネミィ様・リニモたん・その他etc...がいて、さらに2Dと3Dの架け橋もあらゆるところに架かっており、長久手の自然、リニモという観光資源、足を伸ばせば栄や大須も特別遠くない。遊園地のアトラクションにも似た『地域一体参加体験型コンテンツ (ポップカルチャー)』として存分に機能できる状態にあるといっても過言ではない。
特に、秋葉原とも十分にタメをはれるマルチカルチャー特区・大須*4の存在、青空のスクリーンに緑のカーテン、優しく吹き抜ける風で疲れた現代人に癒しを提供してくれるモリコロパークの存在。この二つは、ぽぷかる聖地化計画において縁の下の力持ちとなってくれるに違いない。愛知が<天然>聖地になれる最低条件は、ほぼ満たされているといっていい。
次のステージは、このコンテンツ、つまりは『ぽぷかる』を東西南北老若男女、たくさんの人に知ってもらって、きっかけにしてもらって、愛してもらって、「そうだ、愛知いこう」「ちょっくら応援作品送ってやっか」。そう思ってもらえる時、聖地化計画はまた一歩前進するはずだ。「愛知いこう」は地理的に難しいこともあるだろう。でもしかし『ぽぷかる』にハマってしまったなら、何かの形で委員会の方へ投げてみてはいかがだろうか*5。自らSNSで発信していくのも悪くない。これなら物理距離は全く不問だ。
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20日ごろに送り付けたイラストの線画 |
作品(イラストや小説、ショートストーリー、映像作品などなど表現の幅は広い)の上手下手はさしたる問題ではない。「おれはこの子(場所)をこれだけ愛しているんだァー!!! リニモたん俺だー! 結婚してくれー!」みたいな愛情が伝わるのなら、作品作ってて楽しいのなら、それでよいのだ!
例外として「えっち(R指定)なのはいけないと思います!」が、表現の自由と公共の福祉のバランスを考えると、どこからどこまでがOKでNGなのか難しいところ。とりあえず、著しく愛知を含むあらゆる地域や『ぽぷかる』のイメージを損ねる、disりすぎてしまったようなネガティヴの塊などは、創作したとしても、そっとご自分のHDD奥深くに眠らせておくとよいのかなと思います。
ひとまずは『ぽぷかる3』の成功と繁盛、聖典ならぬ晴天を祈りつつ、"長久手で動き出した聖地化プロジェクトX" が本物の聖地として産声をあげる日を、愛知県民として、ひとりのポップカルチャー好きとして、首を長くして待つことにしよう。
(文・長門みらい)
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<付録・開催概要>
「大ぽぷかる展」の開催
・ポップカルチャーコンテンツが一同に会するイベントをモリコロパークで開催日時
平成25年9月14日(土)、15日(日) 午前10時~場所
内容
・声優、プロ・アマ歌手、ローカルヒーロー、コスプレなどのステージ
・アーティスト、クリエイターの作品上映・出品、出展・出店
・各種ポップカルチャー体験コーナー など
via 愛知ぽぷかる聖地化計画(ぽぷかる)<http://www.pref.aichi.jp/0000061843.html>